遺言書を作成したい方へ

 遺言書を作成することは、ご自身のため、そして残された相続人(家族等)にとってとても大切なことです。ご自身の財産がきっかけで残された家族の相続が「争族」にならないよう、自分の意思を遺言書で残しておくことが「争族」に対する一番の予防策です。

 特に遺言書の重要性、遺言書の種類、作成の流れなどを知ってください。

  遺言書とは、遺言書を書いた本人の最終意思決定であり、その内容を法律的に認めてもらう制度です。

 遺言者が亡くなった時に、作成した遺言書が効力を発揮します。

 ただし、書いたこと全てが法的に認められるわけではなく、法律で決められた一定の内容にしか法的効力は認められません。

 法的効力(法的に認められている)の代表的な例としては、自分の財産を誰にどのくらい遺すのかを指定することです。

 そのほかにも遺言執行者の指定、相続人の廃除、祭祀主催者の指定などについて、遺言者の意思を書き残のこすことができます。

 事前に自分の意思をあらかじめ遺言書に書き残しておくことで、残された相続人(家族等)の相続が「争族」にならないよう予防する効果が期待でき、遺言書があることで、残された相続人の相続の手続きの負担が大きく緩和されます

 また遺言書を作成したからといっても、自動的に遺言書の内容が実現できるわけではありません。

 この点は勘違いされている方が多くいます。遺言書の内容に沿って不動産や銀行など所定の手続きを行い、名義変更や解約手続きをします。遺言書の内容を実現するためにも、後記で解説しますが遺言執行者をあらかじめ決めておくことをお勧めいたします。

 それではこれから遺言書がない場合やある場合の相続手続きの流れや遺言書の種類、遺言執行者、作成方法について簡潔に解説していきたいと思います。

遺言書がない場合の相続の流れ

 遺言書を作成せずに亡くなってしまった場合、亡くなってしまったあなた様の財産の分け方を相続人が決めなければいけません。

 まず相続人があなた様の財産を調査し、あなた様の財産を誰がどのくらい相続するのかということを相続人全員で遺産分割協議(話し合い)をし、全員で合意しなければいけません。

 そして合意した内容をもとに遺産分割協議書という書面を作成します。

 基本的には不動産の名義変更の際に遺産分割協議書が必要となります。また銀行などの預金口座の解約や名義変更の際にも遺産分割協議書があった方が手続きは円滑に進みます。

 ただし、相続人同士での遺産分割協議はなかなかまとまらないことが多いです。

 様々な理由がありますが、代表的な例としては、相続人同士の仲が悪い、相続人が疎遠である、相続人の住んでいる場所が全国バラバラであるなど、なかなか遺産分割協議がまとらないことは多々あります。

 また、遺産分割協議が合意しても遺産分割協議書を作成することは大変な作業となります。

  

遺言書がある場合の相続の流れ

 遺言書を作成してある場合は、作成した遺言書のとおりにあなた様の財産の相続手続きを行います。

 あなた様の財産の分け方を決めるのはあなた様です。

 またあらかじめ遺言書で財産の分け方をきめてありますので、遺産分割協議書は不要です。

 不動産の名義変更や銀行などの預貯金口座の解約や名義変更も遺言書で手続きを進めることができます。

 つまり、遺言書を作成すると、相続人は遺産分割協議をする必要がなくなるので、相続人同士の争いを事前に予防する効果が期待でき、なおかつ遺言書で各種相続の手続きが可能になるので、遺言書があるということは相続人にとってもとても大事なことでしょう。

 

遺言書を作成した方が良い人

 皆様に遺言書を作成することをお勧めしますが、その中でも「特に遺言書を作成した方が良い人」が存在します。もし当てはまりましたら遺言書を作成することをご検討していただければと思います。

 ①遺言者が法定相続分とは異なる分け方をしたい時
 →遺言書がなければ実現できません。

 

 ②子供がいない夫婦
 →子供がいなければ私の財産は全て妻(または夫)が相続できると考えている方が大変多く見受けられますが、まったくの誤りです。あなた様が亡くなった場合妻はもちろんですが、妻と一緒あなた様のご兄弟、場合によってはあなた様のご両親も相続人になる可能性があります。

  子供がいない場合は、遺言書を作成すれば全ての財産を配偶者に相続させることができます。

 ③家業を継がせたいとき
 →家業や個人企業などのように、相続によって資産が分散しては経営が成り立たなくなるおそれがある場合にも遺言書は有効です。

 ④相続人以外の人へ遺産を配分したいとき
 →遺言書がなければ実現できません。

 例
  (1)息子の嫁

  (2)内縁関係の相手

  (3)看病してくれた人(相続人以外)や団体

  (4)公共団体への寄付(市区町村、自治会)

 ⑤その他

  (1)一人で生活している未婚者

  (2)先妻との間に子があり、後妻がいる人

  (3)愛人との間に子がいる人

  (4)推定相続人同士の仲が悪い場合

遺言書で実現できること

 遺言書では主に財産分与について意思を決めますが、その他にも遺言書には法的効力がありますので、代表的な項目について記載します。

 1.遺言執行者の指定

  遺言書の通りに相続の手続きを実現する役割を担う方をあらかじめ決めておくことができます。

  未成年者及び破産者以外はだれでも就任できます。

  遺言書の確実な執行を希望する場  合は、行政書士を含めた専門家を指定することをお勧めします。

 

 2.遺贈

  遺言書においてご自身が相続人以外の人でお世話になった方や団体に自分の財産を与えることができます。

 3.相続分の指定

  遺言書において、相続人の相続分を決めておくことです。

  例えばご自身の財産の4分の3を妻に、4分の1を長男に相続させるなどです。

 4.配偶者居住権

  遺言書において、あなた様のご自宅に一緒に生活していた妻(夫)があなた様が亡くなったあとも住み続けられる権利です。相続財産の大半が不動産の場合に有効です。

 5.相続人の廃除

  相続人の中にあなた様に対して虐待をしたり、重大な侮辱をする者がいた場合、遺言書により相続人の廃除をすることも可能です。

  あなた様がなくなったあとに遺言執行者が家庭裁判所で手続きをします。

  ただし排除の要件が厳しいので必ずしも実現できるわけではありません。

 6.子の認知

  遺言書において、法的に婚姻関係のない子の認知をすることも可能です。

 7.祭祀主催者の指定

  遺言書において先祖のお墓を守ったり、供養する人を指定することができます。

 8.未成年後見人の指定

  未成年の子がいる場合に親権者が一人もいなくなる場合に備えて、未成年者に対して最後に親権を行うものは、遺言書において、未成年者の後見人を指定しておくことができます。

遺言執行者を指定しよう

 遺言執行者についてはお客様から質問が多いです。具体例に少し触れますと

 「遺言執行者は何をするの?」

 「遺言執行者は指定した方が良いの?」

 「遺言執行者は誰に任せればよいの?」

 遺言書は作成してゴールではなく、遺言書の内容を実現することがゴールです。

 ですので、私としましては遺言執行者を指定しておくことをお勧めしています。

 それでは遺言執行者について解説していきます。

 遺言執行者とは、あなた様が作成した遺言書の内容を実現するために、各種必要な手続きを執行する立場になる人です。

 冒頭でもお話しましたが、遺言書を作成したからといって、自動的に遺言書の内容が実現されるわけではありません。必ず誰かが、あなた様の作成した遺言書の内容を実現するために、各種手続きを行ない、不動産の名義変更や金融機関の名義変更、解約手続等を行う必要があります。

 遺言執行者は、未成年や破産者でない限り誰でもなれます。もちろん相続人の中のどなた様でも問題ありません。

 遺言書で遺言執行者を誰にするということを記載しておけば、その方が遺言執行者の立場を担うことになります。

 ただし、遺言執行者として相続手続きを進めるには、専門的な知識や経験が必要な場合が多くあります。

 相続手続きの経験があるという方はあまりいないと思いますので、多くの方が何から始めるのか?どう進めていくのか?と困惑することでしょう。

 また、相続人の中から遺言執行者を指定すると他の相続人が反発し揉め事になるケースもありますし、各種手続きを進めていくので当然負担も大きいです。

 遺言執行者を指定する場合は行政書士などの第三者の立場の専門家を選任する方がスムーズに相続手続きが進むでしょう。

 

遺言書の作成方法

 遺言書の作成方法として代表的なものは、自筆証書遺言公正証書遺言です。

 まずは自筆証書遺言について解説していきます。

 ①法的な要件(この4つの要件を必ず満たす必要があります)

  1. 全文自分で書く
  2. 作成した日にちを書く
  3. 署名をする
  4. 印鑑を捺印(実印が良いでしょう)

 全文を自分で書き、遺言書に作成日を記載し、署名、捺印をして作成します。

 ※民法改正により平成31年1月31日からは財産目録については、別途としてPCでの作成や、通帳のコピーや登記簿謄本の添付でも認められることになりました。
 ただし、別途書類については全てのページに署名捺印が必要です。

 ②自筆証書遺言のメリット、デメリット

 「メリット」

  1. 紙とペン、印鑑があればいつでも作成可能。費用がかからない。(ただし遺言書の内容等を専門家に確認してもらう場合は被用がかかります。)

 「デメリット」

  1. 自分で作成するので法的な要件を満たしてない遺言書を作成してしまう可能性がある。
  2. 作成時に証人がいないので、あなた様の意思で作成したことを証明してくれる人がいない。
     →例えば、あなた様が1000万円の資産がある場合に遺言書で長男に700万円、二男に300万円を相続させるとした遺言書を作成した場合に、相続分の少ない二男が長男に、この遺言書は兄さんが親父に書かせたのでは?という揉め事になってしまう可能性があります。
     作成した遺言書が死後に見つからなかったり、改ざん、紛失、破棄される可能性がある。
     家庭裁判所で遺言書の検認の手続きが必要
     →自筆証書遺言を法務局で保管する場合は検認の手続きは不要です。

 ③保管方法

 自宅で保管する。
 →少なくとも信頼できる人(家族等)1名以上に、自筆証書遺言を作成したことや保管場所を伝えた方が良いでしょう。

 法務局の保管制度を利用して法務局で保管してもらう。
 →自宅で保管するより安全なので、利用の価値は大きいと思います。

 次に公正証書遺言について解説していきます。

 ①法的な要件

  1. 二名以上の証人の立会いがあること
  2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
  3. 公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせること
  4. 遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、押印すること
    ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができます
  5. 公証人が上記の方法に従って作成したものである旨を付記してこれに署名、押印すること
    ※次の者は証人として立会いはできません

   ✓未成年者

   ✓推定相続人、受遺者、これらの配偶者及び直系血族

   ✓公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

 ②公正証書遺言のメリット、デメリット

 「メリット」

  1. 遺言書の信用性が高い
    →裁判官や検事を経験した法律のプロである公証人が手がけてくれるため、遺言書が無効になる可能性が低く法的に有効な遺言書を作成できる。
    また、証人が2名立ち会うので、遺言書の内容の信用性も高い。
  2. 自分で遺言書を書かなくて良い
    →公証人が遺言書を作成してくれるので、自分で遺言書を作成する必要がありません。
  3. 遺言書の紛失や偽造の心配がない
    →公証役場で作成した公正証書遺言の原本は公証役場で保管してくれるため、紛失はもちろん相続分に納得のいかない相続人や第三者などによる遺言書の偽造の心配もありません。
  4. 遺言書の検認が不要のため相続人が相続手続きをスムーズに行える。
    →公正証書遺言は家庭裁判所の検認が不要のため、遺言の内容に従ってすぐに銀行や不動産の相続手続きを開始することができます。

 「デメリット」

  1. 証人が2名必要になる
    →公証人以外で証人を2名以上用意しなければなりません。証人の主な役割とは遺言者は人違いではないか?遺言者の精神状態は正常か?公証人が作成した遺言書の内容は遺言者の意思と相違ないか?など責任を持って確認します。問題がなければ証人として署名と押印します。
     また当然に公証人と証人2名は遺言書の内容を知ることになります。
  2. 作成までに時間がかかる
    →公正証書遺言を作成するには、戸籍関係書類や不動産がある場合は不動産の関係書類また印鑑証明書などの必要書類を収集しなければ作成できません。また証人2名もあらかじめ用意し、遺言書の内容の打ち合わせのため、複数回に渡って公証役場に出向くことになるでしょう。
  3. 費用がかかる。
    →公正証書遺言書作成の費用としては、公証役場に支払う「作成手数料」、「必要書類の交付手数料」、「遺言書正本の交付手数料」、場合によっては「証人手数料」、「専門家報酬」などが発生します。
     公証人に支払う「公正証書遺言」の作成手数料は、遺言の目的である財産の価額に対応する形で、次のとおりその手数料が定められています。
     また目的価額が算定不能の場合は、手数料は1万1000円となります。
目的の価額手数料
100万円以下5000円
100万円を超え200万円以下7000円
200万円を超え500万円以下11000円
500万円を超え1000万円以下17000円
1000万円を超え3000万円以下23000円
3000万円を超え5000万円以下29000円
5000万円を超え1億円以下43000円
1億円を超え3億円以下4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額

遺言書の完成までの流れ

当方が遺言書作成支援業務を受任した場合の流れ、また完成までの目安をご説明いたします。

1.ご面談

→遺言書を作成される方の気持ちに寄り添いながら、遺言書の内容、遺言書の選択について一緒に考えていきます。

 ご本人のお気持ちをよく理解した上で、必要の場合は紛争防止という面からもアドバイスをさせていただきまして、遺言書の内容を決めていきます。

2.必要書類の収集

→ご面談終了後に、戸籍関係書類や不動産関係書類を全て当方で集めていきます。遺言者様には印鑑証明書を所得していただきますが、それ以外の必要書類は全て当方で整えますのでご安心ください。

3.遺言書原案をご確認していただき最終原案の完成

→必要書類の収集後、当方で遺言書の原案を作成します。作成後、遺言者様に内容をご確認していただき最終的な原案を完成します。

4.選択した遺言書に沿って遺言書を完成させる

遺言書の種類によりますが、遺言書作成完了の目安としては、面談をしてから約1ヶ月半~約3ヶ月程度となります。

 ①自筆証書遺言(約1ヶ月半)

 ※最終原案に沿って遺言者様に自筆で作成していただきます。

 ②公正証書遺言(約3ヶ月)

 ※最終原案を元に当方で公正証書遺言書の内容や公正証書遺言の作成日について公証役場と打ち合わせをします。打ち合わせ後に公証役場より公正証書遺言の原案が届きますので、遺言者様と当方で内容を確認し、公正証書遺言の内容を確定します。

公証役場の打ち合わせや、証人の手配も全て当方で責任を持って進めていきますので、安心してお任せ下さい。

 遺言書を作成するには手間や時間がかかりますが、主に遺言書・相続を扱っている当方行政書士が、貴方の気持ちに寄り添い、貴方の想いが実現する遺言書を作成するサポートをしますのでご安心ください。

 また遺言書を作成するか悩んでいて、まずは相談だけでもしたい場合は、遠慮なくご連絡していただければと思います。初回の相談料は無料で受けますので是非ご利用くださいませ。